社会保険の随時改定(月額変更届)はどのようなときに必要ですか?固定的賃金の変動後3か月の平均で標準報酬月額が2等級以上変わると、変動月から4か月目に改定されます
随時改定とは、どのような仕組みですか?
昇給・降給などで報酬が大きく変わったときに、定時決定を待たずに標準報酬月額を改定する仕組みです。ホフィットラボが2026年10月19日に、日本年金機構の「随時改定(月額変更届)」のページで確認しました。
標準報酬月額は、毎年1回の定時決定で決まります。定時決定は、4月から6月の報酬をもとに行う手続きです。随時改定は、定時決定とは別に、年の途中で報酬の水準が変わった被保険者について行います。
随時改定の届出に使う書類は、「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額変更届/厚生年金保険 70歳以上被用者月額変更届」です。事業主が報酬月額などを記入します。日本年金機構の「4-3:月額変更届」のページには、月額変更届は、被保険者の受ける報酬に、昇給や降給による大幅な変動があった場合に提出する届出だと書かれています。
随時改定の対象になるのは、どのようなときですか?
次の3つの要件をすべて満たしたときです。日本年金機構の「随時改定(月額変更届)」のページに、3要件として整理されています。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 固定的賃金の変動 | 昇給・降給、給与体系の変更、日当・時間給などの基礎単価の変更、請負給・歩合給の単価や歩合率の変更、手当の追加や支給額の変更があったこと |
| 2等級以上の差 | 変動月以後の3か月の報酬の平均額から算出した標準報酬月額と、従前の標準報酬月額との間に、2等級以上の差が生じたこと |
| 支払基礎日数 | 変動月以後の3か月の支払基礎日数が、厚生年金保険で17日以上、特定適用事業所に勤務する短時間労働者で11日以上あること |
3つの要件のうち、1つでも欠けると随時改定の対象になりません。固定的賃金の変動がない月に、残業代だけが増えた場合は、2等級以上の差が出ても対象になりません。
固定的賃金とは何ですか?
支給額や支給率があらかじめ決まっている報酬のことです。日本年金機構の「随時改定(月額変更届)」のページに、固定的賃金の変動に当たる次の7つの例が挙げられています。
- 昇給や降給(ベースアップ、ベースダウン)があった場合は、固定的賃金の変動に当たります。
- 日給から月給への変更など、給与体系が変わった場合は、固定的賃金の変動に当たります。
- 日当や時間給などの基礎単価が変わった場合は、固定的賃金の変動に当たります。
- 請負給や歩合給の単価、歩合率が変わった場合は、固定的賃金の変動に当たります。
- 住宅手当や役付手当などが追加された場合や、支給額が変わった場合は、固定的賃金の変動に当たります。
- 一時帰休中に、通常より低い休業手当が3か月を超えて続いた場合は、固定的賃金の変動に当たります。
- 一時帰休が終わり、通常の報酬が3か月を超えて戻った場合も、固定的賃金の変動に当たります。
同ページには、休職中に受け取る休職給は、固定的賃金の変動に当たらないため対象外だと書かれています。
支払基礎日数は、どのように数えますか?
日給制・時給制は出勤日数、月給制・週給制は暦日数で数えます。日本年金機構の「随時改定(月額変更届)」のページに書かれている数え方です。
必要な日数は、変動月以後の3か月について、厚生年金保険で17日以上です。特定適用事業所に勤務する短時間労働者は、11日以上です。
改定は、いつから反映されますか?
変動後の報酬を初めて受けた月から数えて、4か月目です。日本年金機構の「随時改定(月額変更届)」のページに、4月分の給与から変動した場合は、7月に改定されると書かれています。
変動月とは、変動後の固定的賃金で報酬を初めて支払った月です。4月に支払う報酬が変動した場合は、4月・5月・6月の3か月の報酬の平均で比較します。
改定後の標準報酬月額は、6月までに決定した場合は当年の8月まで、7月以降に決定した場合は翌年の8月まで、適用されます。
昇給が遡って決まったときは、どの月が変動月になりますか?
差額が支払われた月が変動月です。日本年金機構の「随時改定(月額変更届)」のページに、昇給が遡って決まり、差額が後から支払われた場合は、差額が支払われた月を変動月とすると書かれています。
3か月の平均は、遡及して支払われた差額を除いて計算します。同ページに、差額を除いた3か月平均で比較すると書かれています。
たとえば、4月分の昇給が10月に決まり、4月から9月までの差額を10月に支払った場合は、10月が変動月になります。10月・11月・12月の3か月について、差額を除いた報酬の平均で、従前の標準報酬月額と比べます。
残業代だけが変わったときも、対象になりますか?
対象になりません。固定的賃金の変動がないためです。固定的賃金が変わっても、残業代などの非固定的賃金の増減によって、結果が逆方向になる場合は、対象外になります。
日本年金機構の「随時改定(月額変更届)」のページには、対象外になる2つのケースが書かれています。
| ケース | 取り扱い |
|---|---|
| 固定的賃金が上がったが、残業代などの非固定的賃金が減り、3か月平均で標準報酬月額が下がって2等級以上の差が生じた | 対象外 |
| 固定的賃金が下がったが、非固定的賃金が増え、3か月平均で標準報酬月額が上がって2等級以上の差が生じた | 対象外 |
表の2つのケースは、固定的賃金の動く向きと、標準報酬月額の動く向きが逆になっています。固定的賃金が上がって標準報酬月額も上がる場合や、固定的賃金が下がって標準報酬月額も下がる場合は、他の要件を満たせば対象になります。
1等級の差でも、随時改定の対象になることはありますか?
あります。標準報酬月額の上限または下限をまたぐ等級変更では、1等級の差でも対象になります。日本年金機構の「随時改定(月額変更届)」のページに、健康保険と厚生年金保険の例が書かれています。
| 保険 | 区分 | 従前の等級 | 3か月平均 | 改定後の等級 |
|---|---|---|---|---|
| 厚生年金保険 | 昇給(上限付近) | 31等級(620千円) | 665千円以上 | 32等級(650千円) |
| 厚生年金保険 | 降給(下限付近) | 2等級(98千円) | 83千円未満 | 1等級(88千円) |
| 健康保険 | 昇給(上限付近) | 49等級(1,330千円) | 1,415千円以上 | 50等級(1,390千円) |
| 健康保険 | 降給(下限付近) | 2等級(68千円) | 53千円未満 | 1等級(58千円) |
厚生年金保険の等級は、最高が32等級(650千円)、最低が1等級(88千円)です。健康保険の等級は、最高が50等級(1,390千円)、最低が1等級(58千円)です。同ページには、このほかに、昇給で下限付近の1等級から2等級へ上がる例と、降給で上限付近の32等級から31等級へ下がる例も書かれています。
月額変更届は、いつまでに出しますか?
速やかに提出します。日本年金機構の「随時改定(月額変更届)」のページに、提出時期は「速やかに」と書かれています。算定基礎届のように、日付が固定された期限は、同ページには書かれていません。
提出先は、事務センターまたは管轄の年金事務所です。提出方法は、電子申請、郵送、窓口持参のいずれかです。
毎年9月の定時決定の算定月(4月から6月)より後に、報酬月額が2等級以上変動した場合も、月額変更届の提出が必要だと、同ページに書かれています。
年間報酬の平均で算定することを申し立てる場合は、「年間報酬の平均で算定することの申立書(随時改定用)」と、例年の状況や標準報酬月額の比較、被保険者の同意書の2つの様式を添付します。
随時改定で、保険料はいくら変わりますか?
協会けんぽ東京支部の令和8年度の保険料額表で、標準報酬月額が26万円から30万円へ上がる場合、本人負担は月5,676円増えます。40歳未満で、介護保険に加入していない被保険者の計算です。ホフィットラボは、協会けんぽの東京支部の保険料額表(令和8年3月分から)で、等級と保険料額を確認しました。
計算の前提は、4月分の給与から基本給が上がり、4月・5月・6月の3か月の報酬の平均が30万円になったケースです。従前の標準報酬月額は26万円でした。
- 従前の標準報酬月額260,000円は、健康保険の20等級(厚生年金保険の17等級)に当たります。
- 3か月平均の300,000円は、報酬月額290,000円以上310,000円未満の範囲に当たります。この範囲の標準報酬月額は、健康保険の22等級(厚生年金保険の19等級)の300,000円です。
- 健康保険も厚生年金保険も、20等級から22等級へ、17等級から19等級へと、2等級の差があります。
- 4月分の給与から変動したため、7月に改定されます。
| 項目 | 料率 | 改定前(26万円)の本人負担 | 改定後(30万円)の本人負担 | 差額 |
|---|---|---|---|---|
| 健康保険 | 9.85% | 12,805円 | 14,775円 | 1,970円 |
| 子ども・子育て支援金 | 0.23% | 299円 | 345円 | 46円 |
| 厚生年金保険 | 18.3% | 23,790円 | 27,450円 | 3,660円 |
| 合計 | 36,894円 | 42,570円 | 5,676円 |
表の本人負担額は、保険料額表の折半額です。表の合計は、雇用保険料と介護保険料を含みません。40歳から64歳の被保険者には、全国一律1.62%の介護保険料率が加わると、協会けんぽの「令和8年度の都道府県毎の保険料率」のページに書かれています。
料率の出典は次のとおりです。東京都の健康保険料率は、令和7年度の9.91%から令和8年度は9.85%に変わり、令和8年3月分(4月納付分)から適用されます。子ども・子育て支援金率は、令和8年4月分(5月納付分)から全国一律の0.23%が加わります。厚生年金保険料率は、日本年金機構の「厚生年金保険料額表」のページに、18.3%で固定されていると書かれています。
事業主は、2026年10月19日時点で何を確認すればよいですか?
固定的賃金の変動の有無、変動月、3か月の平均、等級の差の4点です。
- 昇給・降給・手当の変更・単価の変更があった月を確認し、その月を変動月として記録します。
- 変動月以後の3か月の報酬を集計し、遡及の差額が含まれていないかを確認します。
- 3か月の平均を保険料額表に当てはめ、従前の等級との差が2等級以上かを確認します。上限・下限をまたぐ場合は、1等級の差も確認します。
- 支払基礎日数が、厚生年金保険で17日以上(特定適用事業所の短時間労働者は11日以上)あるかを確認します。
- 要件を満たす場合は、月額変更届を速やかに提出します。
本記事で確認した内容と確認日
ホフィットラボは2026年10月19日に、日本年金機構の「随時改定(月額変更届)」「4-3:月額変更届」「厚生年金保険料額表」のページと、協会けんぽの「令和8年度の都道府県毎の保険料率」のページ、東京支部の令和8年度保険料額表を確認しました。
確認した内容は、随時改定の3要件、固定的賃金の例、支払基礎日数の数え方、4か月目の改定、遡及昇給の変動月、非固定的賃金だけの変動、1等級差で対象になる場合、届出の時期と提出先、令和8年度の料率と東京支部の保険料額です。個別の事案は、管轄の年金事務所または加入している健康保険の窓口に確認してください。
出典(いずれも公式サイト・公式資料)
- 日本年金機構「随時改定(月額変更届)」 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20150515-02.html
- 日本年金機構「4-3:月額変更届(報酬額に大幅な変動があり、随時改定に該当するとき)」 https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kounen/tekiyo/hoshu/20141224.html
- 協会けんぽ「令和8年度の都道府県毎の保険料率」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/about/business/insurance_rate/rate_prefectures/r08/index.html
- 協会けんぽ 東京支部「令和8年度保険料額表(令和8年3月分〜)」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/r8/ippan/R8_13tokyo.pdf
- 日本年金機構「厚生年金保険料額表」 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/ryogaku/ryogakuhyo/index.html
