従業員50人未満の会社もストレスチェックが義務になりますか?施行日と準備の中身を厚生労働省の資料で確認しました
従業員50人未満の会社もストレスチェックが義務になりますか?
義務になります。令和7年法律第33号による労働安全衛生法の改正で、労働者数50人未満の事業場でもストレスチェックの実施が義務とされました。改正前は50人以上の事業場だけが義務で、50人未満は当分の間の努力義務でした。
ストレスチェック制度そのものは平成27年12月に始まっています。制度の開始から50人未満の事業場は努力義務のままで、今回の改正で全ての事業場が義務の対象になりました。
義務になるのはいつからですか?
令和10年4月1日からです。厚生労働省が令和8年2月に公表した「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」の冒頭に、施行日として令和10年4月1日と書かれています。
日付をめぐって資料が食い違って見える点があります。改正法の施行期日を説明した厚生労働省の資料では、ストレスチェックに関する部分の施行期日が「公布後3年以内に政令で定める日」と書かれています。改正法の公布は令和7年5月です。条文の書き方をそのまま読むと日付が確定していないように見えますが、ホフィット中小企業ラボが2026年9月1日に確認した令和8年2月のマニュアルには、令和10年4月1日という日付が入っています。
| 資料 | 時点 | 施行日の書き方 |
|---|---|---|
| 改正法の概要資料 | 令和7年8月 | 公布後3年以内に政令で定める日 |
| 小規模事業場向けマニュアル | 令和8年2月 | 令和10年4月1日 |
表の要点は、古い資料だけを見ると施行日が未定に見える、という点です。準備の期限を決めるときは、令和8年2月のマニュアルに書かれた令和10年4月1日を基準にしてください。
2026年9月1日から令和10年4月1日までは、約1年7か月です。
誰がストレスチェックの対象になりますか?
常時使用する労働者です。マニュアルでは、一般定期健康診断の対象者と同じ2つの要件をどちらも満たす人と定義されています。契約の名称や国籍は関係ありません。
- 期間の定めのない労働契約で使用されている人が対象です。期間の定めがある契約でも、契約期間が1年以上の人、契約更新で1年以上使用される予定の人、すでに1年以上引き続き使用されている人は含まれます。
- 1週間の労働時間数が、同じ事業場で同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上である人が対象です。
- 1週間の労働時間数が通常の労働者の4分の3未満であっても、1つ目の要件を満たし、労働時間数が通常の労働者のおおむね2分の1以上である人には、実施することが望ましいとされています。
派遣労働者の扱いは分かれます。派遣労働者に対するストレスチェックの実施義務は、派遣先ではなく派遣元にあります。一般定期健康診断と同じ考え方です。
従業員は必ず受けなければいけませんか?
受検の義務はありません。一般定期健康診断と異なり、ストレスチェックでは労働者に受検義務が課されていません。マニュアルでは、制度を効果的なものにするため、できるだけ対象者全員が受検することが望ましいと書かれています。
事業者側の義務は3つに分かれます。ストレスチェックの実施は義務、高ストレスと判定された人から申出があった場合の医師の面接指導は義務、集団分析と職場環境改善は事業場の規模に関わらず努力義務です。
| 取組 | 事業者の義務の区分 |
|---|---|
| ストレスチェックの実施 | 義務(令和10年4月1日から50人未満も対象) |
| 医師の面接指導(申出があった場合) | 義務 |
| 集団ごとの集計・分析と職場環境の改善 | 努力義務(事業場の規模に関わらず) |
表の要点は、義務の範囲が取組ごとに違う、という点です。集団分析まで含めて全部が義務になるわけではありません。
労働基準監督署への報告は必要ですか?
労働者数50人未満の事業場は不要です。ストレスチェックの実施結果を労働基準監督署へ報告する義務は、労働者数50人以上の事業場に課されています。
ただし、ここには人数の数え方の罠があります。報告の要否を判断する「常時使用している労働者」は、ストレスチェックの対象者と定義が違います。ストレスチェックの対象者は契約期間と週の労働時間で判断しますが、報告の要否は常態として使用されているかどうかで判断します。労働時間数が短いアルバイトやパートタイム労働者、派遣先で受け入れている派遣労働者も、継続して雇用して常態として使用していれば人数に含めます。
つまり、ストレスチェックの対象者が50人未満でも、常時使用している労働者が50人以上になり、報告が必要になる場合があります。マニュアルでも注意点として挙げられています。
事業場の数え方も確認してください。事業場は原則として、工場、事務所、店舗のように同一の場所にあるものを1つの事業場と考えます。同一企業でも場所が分散していれば別々の事業場です。本社が50人以上でも、10人の営業所は別の事業場として扱います。
50人未満の会社は自社でストレスチェックを実施できますか?
マニュアルでは外部機関への委託が推奨されています。労働者数50人未満の事業場については、労働者のプライバシー保護の観点から、原則として実施を外部機関に委託することが推奨されると書かれています。外部機関には健診機関も想定されています。
外部委託しても、事業者の責任がなくなるわけではありません。ストレスチェック制度は事業者の責任において実施するものだとマニュアルに明記されています。事業者は外部委託先との連絡調整を担当する実務担当者を事業場内で指名して、実施体制を整える必要があります。
個人の健康情報の流れは分けて考えます。外部委託した場合、ストレスチェックの個人結果を含む労働者の健康情報の取扱いは外部機関で完結し、事業場内では取り扱いません。事業場内に置くのは実務を担当する者です。マニュアルには、外部委託ではなく自社で実施する場合の留意点をまとめた章も設けられています。
施行までに何を準備すればよいですか?
方針の表明、関係労働者からの意見聴取、社内ルールの作成という3段階です。マニュアルは実施に向けた準備を3つの項目に分けています。
- 事業者は、ストレスチェック制度の導入方針を決定して従業員に表明します。マニュアルには従業員向けメッセージの文例が載っています。
- 事業者は、実施体制と実施方法について関係労働者の意見を聴きます。労働者数50人未満の事業場では、労働安全衛生規則第23条の2に基づいて安全衛生に関する意見を聴く機会を設けることとされているため、その機会を活用する方法が示されています。
- 事業者は、意見聴取の結果を踏まえて社内ルールを作成し、従業員に周知します。マニュアルには実施規程のモデル例が巻末資料として付いています。
社内ルールに定める項目は6つです。実施体制、実施方法、記録の保存、情報管理、情報の開示と訂正および苦情処理、不利益な取扱いの防止です。マニュアルの社内ルール例では、集団分析結果と面接指導結果の意見書を会社で5年間保存すると書かれています。
意見を聴く機会は新しく作らなくてかまいません。マニュアルには、定例の業務ミーティング、朝礼、他の委員会の開催に合わせる形で意見を聴いている事例が挙げられています。
複数の会社で共同して実施することはできますか?
マニュアルは共同実施を想定した類型を示しています。小規模事業場を3つの類型に分けて、それぞれとマニュアルの関係を説明しています。
| 類型 | 想定される事業場 | マニュアルとの関係 |
|---|---|---|
| 単独型 | 企業規模として労働者数50人未満の事業場 | メインターゲット |
| 業界団体所属型・地域集積型 | 商工会や協同組合に所属する企業、工業団地・商店街・卸団地でまとまっている企業 | 参照して実施することが望まれる |
| 単独企業分散型 | 50人以上規模の企業の営業所・工場・チェーン店で50人未満の事業場 | 本社と連携のうえ参考にする |
表の要点は、自社が単独の1事業場なのか、団体や本社と組める立場なのかで進め方が変わる、という点です。
業界団体所属型と地域集積型については、ストレスチェックの実施や集団分析を共同で行うことで、契約事務の集約や集団分析のための集団形成といった利点があると書かれています。1社では人数が少なく集団分析が成り立たない場合に、共同実施が選択肢になります。
国はどんな支援を用意していますか?
マニュアルの作成と、地域産業保健センターの体制拡充です。厚生労働省は、小規模事業者が制度改正に対応できるよう、2つの支援策を挙げています。
1つ目が、50人未満の事業場に即した実施体制と実施方法を示したマニュアルの作成です。令和8年2月25日に公表されました。2つ目が、医師による面接指導の受け皿となる地域産業保健センターの体制拡充です。
厚生労働省の小規模事業者向けページには、マニュアル本体のほかに、概要版のスタートガイド、省令改正リーフレット、社内ルール例と社内規程例のモデル規程が掲載されています。ストレスチェック制度サポートダイヤル(0570-031050)も案内されています。
この記事で確認した内容と確認日
ホフィット中小企業ラボが2026年9月1日に厚生労働省の資料で確認した内容は次の4点です。
- 令和7年法律第33号による労働安全衛生法の改正で、労働者数50人未満の事業場のストレスチェックが努力義務から義務になります。
- 令和8年2月の「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」には、施行日が令和10年4月1日と明記されています。改正法の概要資料では施行期日が「公布後3年以内に政令で定める日」と書かれており、資料によって書き方が違います。
- ストレスチェックの実施結果の労働基準監督署への報告は労働者数50人以上の事業場の義務です。報告の要否を判断する人数はストレスチェックの対象者とは数え方が違い、短時間のパートタイム労働者や派遣先の派遣労働者も含めて数えます。
- 労働者数50人未満の事業場については、プライバシー保護の観点から実施を外部機関に委託することが推奨されています。委託しても実務担当者の指名は必要です。
制度の詳細と最新の内容は、厚生労働省のストレスチェック制度のページとマニュアル本体で確認してください。
出典(いずれも各社公式サイト)
- 厚生労働省 小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(令和8年2月) https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/001646587.pdf
- 厚生労働省 「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を公表します https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_69680.html
- 厚生労働省 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律について(報告) https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/001543076.pdf
- 厚生労働省 労働者数50人未満の小規模事業者の方 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_70761.html